ふくれ菓子
ふくれ菓子(ふくれがし/ふくれかし)とは、鹿児島県・宮崎県といった九州南部・東部地域で作られている郷土菓子であり、黒砂糖風味の褐色の蒸しパン風の菓子である。「ふくれ菓子」と言う名称は総称であり、特定の商標ではない。また、沖縄県では多くは半球形に作られるあがらさー、または黒糖かすてらなどと呼ばれる類似の味の蒸しパンがある。
名称
薩摩地域では「ふくれがし」という呼び名が通っている。膨張剤として重曹(重炭酸ソーダ)を使っているため、蒸しあがると2倍以上によく膨れるため、この名がある。重炭酸ソーダを使うため、「ソーダ菓子」という呼び名もある。
鹿児島県内でも奄美群島では、「膨れ羹」の意味で「ふくれかん」(奄美大島)、「ふくりかん」(喜界島)というが、ふくれ菓子と言っても通じる。徳之島では「ソーダ餅」ともいう[1]。
なお、山崎製パンが全国的に発売している商品「黒糖フークレエ」は、この菓子に類似している。
製法
基本の原材料は黒砂糖粉、薄力粉、水、重曹であり、重量比は2:2:1:0.05程度とする。粉と砂糖は等量とするのが食感の上では最も良い[2]。
全量を黒砂糖粉とするとかなり黒くなるため、半分程度を白砂糖に置き換えることもある。また、水の一部を牛乳や鶏卵としたり、蜂蜜、ヨモギ、カボチャ、小豆、スイゼンジナ(はんだま)などの食材を混ぜ加える場合もある。奄美大島では白糖とタンカン果汁で作る、橙色のものもある。
重曹は小麦粉に混ぜて篩を通しておく。砂糖は水を加えて加熱し、溶かしておく。
粉と糖液を混ぜ合わせ、ふきんを敷いた枠やケーキ型に入れ、蒸篭で40-50分程度しっかり蒸し、膨れたら完成となる。
発泡目的で蒸す前に酢を少量混ぜ入れる場合もあるが、鬆(す)が大きくなりやすい。生地に酢を加えると若干粘度が下がり、流動性が上がる[2]。鶏卵を加えた場合はやや硬い食感となる[2]。
歴史
昭和時代から家庭で子供のおやつとして作られているが、あまり日持ちしないので作ってすぐ食べる必要があった。
現在は流通もよくなり、衛生的な工場で作ることで消費期限もやや長くなったため、菓子パンなどと一緒に食品スーパーに並べられている。見た目どおりで、なじみ易い味なので、全国を巡回する九州物産展に出品される事も多い。
脚注
- ^ “ソーダ餅”. 天城町役場、保健福祉センター (2011年11月1日). 2017年1月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年1月4日閲覧。
- ^ a b c 小住フミ子、大迫康子、「郷土料理 : ふくれ菓子」『鹿児島県立短期大学紀要 自然科学篇』41巻pp19-27、1990年、鹿児島県立短期大学
関連項目
- 黒棒 - 材料はほぼ同一であるが、水分が少なく、表面に黒砂糖液を塗って焼いている。
- 軽羹(かるかん) - うるち米を使った鹿児島県の蒸し菓子であるが、黒砂糖を使うと似た外観となる。
- マーラーカオ(馬拉糕、馬来糕) - 中国香港などの類似の蒸し菓子。小麦粉に鶏卵、ラードやバターを合わせて作る点で異なる。
- ぽっぽ焼き - 新潟県の郷土菓子
- クレイジーケーキ-洋菓子の一種。重曹を使用する点が類似している。
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