クランカーティ伯爵

クランカーティ伯爵
Earl of Clancarty
創設時期1803年2月11日
創設者ジョージ3世
貴族アイルランド貴族
初代初代伯ウィリアム・トレンチ
現所有者9代伯ニコラス・トレンチ(英語版)
相続人なし
推定相続人なし
付随称号ダンロー子爵
クランカーティ子爵(UK
キルコネル男爵
トレンチ男爵(UK)
モットー助言と思慮によって
(Consilio Et Prudentia)
オランダ貴族(オランダ語版)フースデン侯爵(英語版)を兼ねる

クランカーティ伯爵(クランカーティはくしゃく、: Earl of Clancarty)は、イギリスの伯爵貴族アイルランド貴族爵位。これまでに2度創設され、第2期が存続している。同族にアシュタウン男爵家がある。

歴史

マッカーティー家

コーマック・マクダーモット・マッカーシー(英語版)(1552–1616)の息子チャールズ・マッカーシー(英語版)(1570s–1641)は1620年3月24日に騎士爵に叙された後、1628年11月15日にアイルランド貴族であるコーク県におけるマスケリー子爵ブラーニー男爵に叙された[1]。これらの爵位は初代の死後、まず次男ドノー・マッカーティー(英語版)(1594–1665)およびその男系男子が継承し、それが断絶すると初代の男系男子が継承する、という継承順位が規定された[2]

この継承順位に基づき2代子爵となった次男ドノーは父の存命中にアイルランド庶民院議員を務め、1638年ごろにノバスコシアにおける準男爵に叙された[3]。彼は1641年アイルランド反乱(英語版)で反乱軍に加わったが、1651年のノックナクラッシーの戦い(英語版)で初代ブロッグヒルのボイル男爵ロジャー・ボイル率いるイングランド共和国軍に敗れ、以降王党派に転じた[4]。そして、王党派としての功績により1658年11月27日にコーク県におけるクランカーティ伯爵に叙された[3]

その孫にあたる4代伯爵ドノー・マッカーティー(英語版)(1668–1734)ジャコバイトであり、ウィリアマイト戦争でジャコバイト軍に加わったが、1690年のコーク包囲戦(英語版)で捕虜になり、ロンドン塔に投獄された[5]。彼は1691年に領地と爵位を剥奪され、1694年にフランスに逃亡した[6]。1698年にイングランドに戻って妻に会ったが、妻の弟にあたるスペンサー卿チャールズ・スペンサーが当局に密告したため再び投獄された[6]。のちに出国を条件に釈放され、以降2度と帰国しなかった[6]

4代伯爵の息子ロバート・マッカーティー(英語版)(1685–1769)は爵位を継承できなかったが、父の存命中に「マスケリー子爵」の儀礼称号を、父の死後に「クランカーティ伯爵」の称号を使用した[6]。彼は1730年代にニューファンドランド総督を務めたが、爵位継承を認められなかったため1741年に移住して、1745年ジャコバイト蜂起に関与した[6]

トレンチ家

政治家リチャード・トレンチ(英語版)(1710–1768)の息子ウィリアム・パワー・キーティング・トレンチ(1741–1805)は29年間アイルランド庶民院議員を務めたのち、1797年11月25日にアイルランド貴族であるゴールウェイ県におけるガーバリーのキルコンネル男爵に、1801年1月3日にゴールウェイ県ダンローおよびロスコモン県バリナスローにおけるダンロー子爵に、1803年2月11日にコーク県におけるクランカーティ伯爵に叙された[7]

その息子である2代伯爵リチャード・ル・プア・トレンチ(英語版)(1767–1837)は小ピット派の政治家であり、アイルランド庶民院議員、連合王国庶民院議員、アイルランド郵政長官(英語版)、アイルランド貴族代表議員商務庁長官を歴任した[8]。このほか、外交官としては在オランダイギリス大使(英語版)を務め、ウィーン会議のイギリス代表も務めた[8]。その後、1815年8月4日に連合王国貴族であるゴールウェイ県におけるガーバリーのトレンチ男爵に叙され、駐蘭大使在任中の1818年7月18日にネーデルラント連合王国の爵位であるフースデン侯爵(英語版)に叙された[8]。さらに駐蘭大使の退任にあたり、1823年12月8日に連合王国貴族であるコーク県におけるクランカーティ子爵に叙された[8]

その曽孫にあたる5代伯爵ウィリアム・フレデリック・ル・プア・トレンチ(英語版)(1868–1929)は広大な領地を相続したが、1891年に領地を担保に多額な借金をして、1907年にアイルランドにおいて、1910年にイングランドにおいて破産を宣告された[9]

5代伯爵の息子にあたる8代伯爵ウィリアム・フランシス・ブリンズリー・ル・プア・トレンチ(1911–1995)は1979年に貴族院で政府によるUFO研究を提唱した[10]

2024年現在の当主は8代伯爵の弟の息子にあたるニコラス・ル・プア・トレンチ(英語版)(1952–)である[11]

マッカーティー家

マッカーティー家の紋章

マスケリー子爵(1628年)

  • 初代マスケリー子爵チャールズ・マッカーシー(英語版)(1570年代 – 1641年)
  • 第2代マスケリー子爵ドノー・マッカーティー(英語版)(1594年 – 1665年)
    • 1638年、準男爵に叙爵。1658年、クランカーティ伯爵に叙爵

クランカーティ伯爵(1658年)

  • 初代クランカーティ伯爵ドノー・マッカーティー(英語版)(1594年 – 1665年)
    • マスケリー子爵チャールズ・マッカーティー(英語版)(1633年/1634年 – 1665年)
  • 第2代クランカーティ伯爵チャールズ・マッカーティー(1663年 – 1666年)
  • 第3代クランカーティ伯爵キャラハン・マッカーティー(英語版)(1676年没)
  • 第4代クランカーティ伯爵ドノー・マッカーティー(英語版)(1668年 – 1734年)
    • 1691年に爵位剥奪
    • マスケリー子爵ロバート・マッカーティー(英語版)(1685年 – 1769年)

トレンチ家

クランカーティ伯爵(1803年)

  • 初代クランカーティ伯爵ウィリアム・パワー・キーティング・トレンチ(1741年 – 1805年)
  • 第2代クランカーティ伯爵リチャード・ル・プア・トレンチ(英語版)(1767年 – 1837年)
    • 1815年、トレンチ男爵に叙爵。1818年、フースデン侯爵に叙爵。1823年、クランカーティ子爵に叙爵
  • 第3代クランカーティ伯爵ウィリアム・トマス・ル・プア・トレンチ(1803年 – 1872年)
  • 第4代クランカーティ伯爵リチャード・サマセット・ル・プア・トレンチ(英語版)(1834年 – 1891年)
  • 第5代クランカーティ伯爵ウィリアム・フレデリック・ル・プア・トレンチ(英語版)(1868年 – 1929年)
  • 第6代クランカーティ伯爵リチャード・フレデリック・ジョン・ドノー・ル・プア・トレンチ(1891年 – 1971年)
  • 第7代クランカーティ伯爵グレヴィル・シドニー・ロッチフォート・ル・プア・トレンチ(1902年 – 1975年)
  • 第8代クランカーティ伯爵ウィリアム・フランシス・ブリンズリー・ル・プア・トレンチ(1911年 – 1995年)
  • 第9代クランカーティ伯爵ニコラス・ル・プア・トレンチ(英語版)(1952年 – )

爵位の推定相続人はいない。

  • 2代伯爵リチャード・ル・プア・トレンチ(英語版)
    2代伯爵リチャード・ル・プア・トレンチ(英語版)
  • 5代伯爵ウィリアム・フレデリック・ル・プア・トレンチ(英語版)
    5代伯爵ウィリアム・フレデリック・ル・プア・トレンチ(英語版)

出典

  1. ^ Cokayne, Doubleday & Howard de Walden 1936, p. 440.
  2. ^ Cokayne, Doubleday & Howard de Walden 1936, p. 441.
  3. ^ a b Cokayne, Gibbs & Doubleday 1913, p. 214.
  4. ^ Cokayne, Gibbs & Doubleday 1913, pp. 214–215.
  5. ^ Cokayne, Gibbs & Doubleday 1913, pp. 216–217.
  6. ^ a b c d e Cokayne, Gibbs & Doubleday 1913, p. 217.
  7. ^ Cokayne, Gibbs & Doubleday 1913, p. 218.
  8. ^ a b c d Cokayne, Gibbs & Doubleday 1913, p. 219.
  9. ^ Cokayne, Gibbs & Doubleday 1913, p. 220.
  10. ^ "UNIDENTIFIED FLYING OBJECTS". Parliamentary Debates (Hansard). House of Lords. 18 January 1979. col. 1246–1316.
  11. ^ "Earl of Clancarty". UK Parliament (英語). 2024年5月19日閲覧

参考文献

  • Cokayne, George Edward; Gibbs, Vicary; Doubleday, Herbert Arthur, eds. (1913). Complete peerage of England, Scotland, Ireland, Great Britain and the United Kingdom, extant, extinct or dormant (Canonteign to Cutts) (英語). Vol. 3 (2nd ed.). London: The St. Catherine Press, Ltd. pp. 214–221.
  • Cokayne, George Edward; Doubleday, Herbert Arthur; Howard de Walden, Thomas, eds. (1936). The Complete Peerage, or a history of the House of Lords and all its members from the earliest times (Moels to Nuneham) (英語). Vol. 9 (2nd ed.). London: The St. Catherine Press. pp. 440–441.
  • Cokayne, George Edward; Hammond, Peter W., eds. (1998). The Complete Peerage, or a history of the House of Lords and all its members from the earliest times (Addenda & Corrigenda) (英語). Vol. 14 (2nd ed.). Stroud: Sutton Publishing. pp. 178–179. ISBN 978-0-7509-0154-3