タニウツギ

タニウツギ(ベニウツギ)
タニウツギ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : キキョウ類 Campanulids
: マツムシソウ目 Dipsacales
: スイカズラ科 Caprifoliaceae
: タニウツギ属 Weigela
: タニウツギ W. hortensis
学名
Weigela hortensis (Siebold et Zucc.) K.Koch (1853)[1]
和名
タニウツギ(谷空木)

タニウツギ(谷卯木[2]・谷空木[3]学名: Weigela hortensis)はスイカズラ科タニウツギ属落葉低木。別名ベニウツギともよばれ、地方名でダニバナ、田植えの時期にが咲くのでタウエバナ(田植え花)とも呼ばれる[3]。和名のとおり山地の谷沿いの沢に近いところに生える[2]。梅雨の時期に山道を通ると新緑の中で咲くピンクの花はひときわ映えて見えるので見つけやすい。ウツギは漢字で卯木あるいは空木と書くが、卯木は卯月(陰暦4月、陽暦5月)に咲くからといわれ、空木は小枝が中空なのでその名がついたものである[4]

分布と生育環境

日本特産。北海道の西部、本州東北地方北陸地方山陰地方に分布し、主に日本海型気候の多雪地で、日当たりのよい山地の谷沿いや斜面に多く見られる[5][3]。北海道では積丹半島あたりから出てくるが、東北地方でも日本海側に沿って多く見られる多雪型の灌木である[6]。関東地方はニシキウツギが多いが、信越県境付近から日本海側でタニウツギが多い[3]

雪崩が多発する急傾斜地ではブナ林などの高木林は成立しにく、本種などのしなやかな低木類の群落となることが多い。群生すると、山一面が紅色の花で染まる[7]

特徴

落葉広葉樹[3]。低木で樹高は2 - 5メートル (m) になる[3]樹皮は灰褐色で縦に裂け剥がれる[8]。新しいは赤みを帯び、無毛か2毛条があり、やがて枝先は枯れることが多い[8]

は長さ3 - 10ミリメートル (mm) の葉柄をもって対生し、葉身は長さ5 - 12センチメートル (cm) 、幅2 - 6 cmになり、徒長枝につく葉はさらに大きくなる[3]。形は卵形、卵形楕円形から長楕円形または倒卵形、先端は鋭先頭で尾状となり、基部は円形またはくさび形で、縁には細かい鋸歯がある[3]。裏面には白い毛が密生する[3]

花期は5 - 7月[3]。今年枝の先端か葉腋散房花序を出して、2 - 3個ずつ薄い紅色のをつける[5][3]。5裂する裂片は長さ4 - 7 mm。花冠は淡紅色の漏斗状で、長さ2.5 - 3.5 cm、径2 cmになり、先端は放射相称に5裂する。花冠の内側より外側が色が濃く、開花しているものより蕾のほうが濃い。雄蕊は5本、雌蕊は1本あり、花柱は雄蕊より長い[3]

果期は10 - 11月[3]果実蒴果で、長さ1.2 - 1.8 cm、径2.5 - 3 mmの細い円柱状で、種子は細かくて長さ1 mmの楕円形になり多数出る[5]。冬で果実はよく残っている[8]

冬芽は対生し、褐色の卵形で、多数の芽鱗に覆われる[8]。冬芽のわきにつく葉痕は、三角形や三日月形で維管束痕は3個あり、葉痕の両側から稜が出る[8]

  • 青森県八甲田
    青森県八甲田
  • 福島県会津地方
    福島県会津地方

利用等

花色が美しいため、古くから公園や庭園などに鑑賞目的で植栽されることも多い[5]。また、若芽はヨモギの代わりに餅などに入れて食べる[3]

タウエバナなどの農作の目安にされる異名がある一方、材木を葬儀の際に骨を拾う箸に利用したことや、花が燃えるように美しく、花の時季には辺り一面が山火事になったように見えることからかカジバナ(火事花)、シビトバナ(死人花)、ソウシキバナ(葬式花)などの異名があり、忌み嫌われている地方もある[9]

下位分類

シロバナウツギ

まれに、白花品種のシロバナウツギがある。

  • シロバナウツギ Weigela hortensis (Siebold et Zucc.) K.Koch f. albiflora (Siebold et Zucc.) Rehder

脚注

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Weigela hortensis (Siebold et Zucc.) K.Koch”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月23日閲覧。
  2. ^ a b 辻井達一 2006, p. 205.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n 西田尚道監修 学習研究社編 2009, p. 13.
  4. ^ 辻井達一 2006, p. 208.
  5. ^ a b c d 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 227.
  6. ^ 辻井達一 2006, p. 206.
  7. ^ 西田尚道監修 学習研究社編 2000, p. 13.
  8. ^ a b c d e 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 25.
  9. ^ 梅田始 1991.

参考文献

  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、25頁。ISBN 978-4-416-61438-9。 
  • 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、205 - 208頁。ISBN 4-12-101834-6。 
  • 西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』学習研究社〈増補改訂 フィールドベスト図鑑5〉、2009年8月4日、13頁。ISBN 978-4-05-403844-8。 
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、227頁。ISBN 4-522-21557-6。 
  • 梅田始「タニウツギの民俗と方言」『新潟県植物保護』第10巻、新潟県植物保護協会、1991年8月、10-15頁、CRID 1050564289188184192、hdl:10191/10294 
  • 佐竹義輔ほか編『日本の野生植物 木本Ⅱ』平凡社、1989年。
  • 会津若松市『会津花紀行 : 大地に息づく豊かな自然』会津若松市〈会津若松市史 ; 11(自然編 1 植物)〉、1999年。国立国会図書館書誌ID:000002844691。https://id.ndl.go.jp/bib/000002844691 

関連項目

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