五箇山ぼべら

五箇山ぼべら（ごかやまぼべら）は、五箇山地域（富山県南砺市）で栽培されるカボチャの一品種。

五箇山では古くよりかぼちゃをボブラ（小谷地域ではボビラ）と呼んでおり、これはポルトガル語で「カボチャ」や「ウリ類」を指す「abóbora（ボーボラ）」由来するものである^[1]。また、丸い形のものを「ボブラ」、皺の寄った形のものを「菊ボブラ」と区別しており、菊ボブラは殻が固く長持ちするため、冬至に食べると中風（脳血管障害）にかからないと言われていた^[1]。

五箇山ぼべらはラグビーボールのような形をしており、一般的なかぼちゃと同様、外は濃い緑色、中はオレンジ色である^[2]。重さは1個あたり1.5~3.5kgで、皮が柔らかいこと、甘みが強いこと、熱を加えるとねっとりとして濃厚な甘みが増すことが特徴として挙げられる^[2]。

品種改良前のぼべらは収穫量が少なく大きさも不均等であったことなどが理由で、21世紀初頭にはぼべら栽培はごく少数の農家でのみ行われていた ^[3]。しかし平成16年（2004年）に「富山の伝統野菜」という冊子作成のための調査を切っ掛けに、富山県野菜協会の職員がぼべらの存在を知り、以後県職員の主導によって品種改良が進み、栽培が広まっていった^[4]。

また、平成25年（2013年）に発足した「合掌の森再生協議会」は「合掌の森プロジェクト」の一環としてぼべらのブランド化を始めた^[3]。これにより、それまで「五箇山かぼちゃ」として出荷していたものを、以後「五箇山ぼべら」という名前に統一してブランド化し売り出すようになった^[3]。上平地域の新屋集落では特産品直売所とコミュニティカフェを兼ねた「よりあい処丸池」が道善寺の向いに2020年3月にオープンし、ぼべらの販売を行っている^[5]。

五箇山では合掌造りの屋根を20数年ごとに葺き替えしているが、使用済の古茅を土壌にすき込んで堆肥として用いており、この古茅を用いる伝統農法で今でもぼべらは栽培されている^[2]。また、五箇山地の山間部特有の朝夕の寒暖差が、ぼべらの深みのある味を生み出すと言われている^[2]。

ぼべらは5月に種まきや育苗を始め、同時に圃場整備を進める。その後、5月下旬に定植、6月に古茅を敷いて育てていく。そして8月下旬から収穫し、9月頃から11月にかけて販売される^[4]。

古くは、ぼべらを鍋で碑や蕎麦粉と混ぜ、 お椀に分けて食べていたという。また、塩で煮て食べたり、種を干して乾燥させて、煎って細かくすることで、いりごまのように用いることもあった（「こうばし」と呼ばれる）という^[1]。

ほべらは主に五箇山地域の道の駅や直売所で販売している。道の駅では生のぼべらは腐りやすいため主にぼべらもなかや干しばべらが置かれ、直売所で生のぼべらや加工品が販売されている^[4]。また近年では、富山県・石川県内のイオンマックスバリュでも年に1、2回取り扱われるようになっている^[4]。

上述したようにぼべらは長持ちせず廃棄が多かったことが課題であったが、2010年代後半よりぼべらをペースト化して冷凍保存する技術が確立し、様々な商品化に活かされるようになった^[6]。商品としては、ロールケーキやモンブラン、ソフトクリーム、プリン、もなか、カレー、うどんなどが作られている^[6]。特に近年開発された「干しぼべら」は、長持ちしかつ素材の味を活かした商品として注目されている^[6]。

• 佐々木, 伶奈「伝統野菜「ぼべら」のブランド化と発信」『金沢大学文化人類学研究室調査実習報告書』第36号、金沢大学人間社会学域文化人類学研究室、2021年、87-97頁。 

表 話 編 歴 越中国礪波郡五箇山（現富山県南砺市）
構成	五ヶ谷（赤尾谷・上梨谷・下梨谷・小谷・利賀谷） 五箇山両組（赤尾谷組・利賀谷組） 五箇三村（平村・上平村・利賀村）
歴史	平家の落人伝承 南朝の落人伝承 井口氏の支配 五箇山十日講 越中一向一揆（田屋川原の戦い） 石山合戦の援助 教如上人の下向 佐々成政の制圧（窪城の戦い） 前田家（加賀藩）による支配 改作法の施行（両組制への移行） 祖山村の大槻騒動 天保の高方仕法 長崎村茂右衛門騒動 町村制の施行 南砺市への合併
人物	赤尾の道宗 五ヶ山市助 西勝寺明恵 お小夜 藤井九郎右衛門 細嶋村源太郎 坂上村太兵衛 松尾村与次兵衛 祖山村太郎助 下梨村宅左衛門 岩渕村伊右衛門 大牧村六郎右衛門 水上善治
寺院	赤尾行徳寺（山門と庫裏） 坂上西勝寺（鐘楼門ほか） 下梨瑞願寺（瑞願寺文書・木造阿弥陀如来立像） 新屋道善寺 楮村聖光寺（太子像） 大島称名寺（木造親鸞聖人座像） 上梨円浄寺（鐘楼堂） 中畑本教寺 見座見覚寺 相倉相念寺 皆葎皆蓮寺 田向光明寺 利賀興真寺 栃原念仏道場（什物） 寿川念仏道場 上中田念仏道場
神社	上梨白山宮（本殿・白山宮信仰関係資料） 籠渡白山社（木造獅子頭） 下梨地主神社（御巡幸の儀・節供行事） 高草嶺熊野社（大杉） 杉尾神明社（門杉と欅） 大豆谷八幡宮（僧形八幡神像・小神像ほか） 坂上八幡宮（大杉） 細島熊野社（旧御神体・社叢） 阿別当神明宮（石抱きケヤキ） 乙劍社（御神体） 東赤尾八幡宮（夫婦杉） 西赤尾八幡社（御神体ほか）
名所	世界遺産　合掌造り集落 脇谷のトチノキ 流刑小屋 遠洞渓谷 天柱石 猫池とその周辺 中江の霊水 阿別当の石仏 相倉の夫婦けやき 渡原の大栃 坂上のカツラ
史跡	越中五箇山相倉集落 越中五箇山菅沼集落 岩瀬家住宅 村上家住宅 羽馬家住宅 下梨城 丸岡城 八乙女山砦 大槻伝蔵之碑 コレラ病死者の石碑 大野権兵衛の塚 旧五箇山街道峠道
自然	人形山 金剛堂山 高清水山 高坪山 タカンボウ山 マルツンボリ山 水無山 水無平湿原 利賀川 水無川 梨谷川 小谷川 湯谷 山の神峠 ブナオ峠 栃折峠
その他 文化財	五箇山民謡（こきりこ節・むぎや節） 利賀の初午行事 阿弥陀如来来迎図 入谷の不動明王坐像 栗当の不動明王磨崖像 十日講起請文 成政の制札 血染の名号 南大豆谷村土地文書
特産品	五箇山塩硝 五箇山生糸 五箇山和紙 五箇山豆腐 五箇山ぼべら 利賀そば 三笑楽
施設	道の駅上平 道の駅たいら 道の駅利賀 大牧温泉 五箇山温泉 五箇山荘 新五箇山温泉 ゆ～楽 くろば温泉 たいらスキー場 タカンボースキー場 五箇山県立自然公園 富山県利賀芸術公園 南砺平高校 五箇山インターチェンジ
太字は国指定の文化財。斜体は県指定の文化財。寺院・神社が文化財を所蔵している場合、（）内に記載した。