1981年のアメリカンリーグチャンピオンシップシリーズ

1981年アメリカンリーグ
チャンピオンシップシリーズ
チーム 勝数
ニューヨーク・ヤンキース 3
オークランド・アスレチックス 0
シリーズ情報
試合日程 10月13日–15日
観客動員 3試合合計:15万1539人
1試合平均:05万0513人
MVP グレイグ・ネトルズ(NYY)
ALDS OAK 3–0 KC
NYY 3–2 MIL
殿堂表彰者 ボブ・レモン(NYY監督[注釈 1]
ヨギ・ベラ(NYYコーチ[注釈 2]
リッチ・ゴセージ(NYY投手)
レジー・ジャクソン(NYY外野手)
デーブ・ウィンフィールド(NYY外野手)
リッキー・ヘンダーソン(OAK外野手)
チーム情報
ニューヨーク・ヤンキース(NYY)
シリーズ出場 2年連続5回目
GM セドリック・タリス
監督 ボブ・レモン
シーズン成績 前期:34勝22敗・勝率.607
後期:25勝26敗・勝率.490
東地区前期優勝・後期5位

オークランド・アスレチックス(OAK)
シリーズ出場 6年ぶり6回目
GM ビリー・マーチン
監督 ビリー・マーチン(兼任)
シーズン成績 前期:37勝23敗・勝率.617
後期:27勝22敗・勝率.551
西地区前期優勝・後期2位

 < 1980
ALCS
1981

1982 > 

 < 1980
NLCS
1981

1982 > 
ワールドシリーズ

1981年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)ポストシーズンは10月6日に開幕した。アメリカンリーグの第13回リーグチャンピオンシップシリーズ(13th American League Championship Series、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、13日から15日にかけて計3試合が開催された。その結果、ニューヨーク・ヤンキース東地区)がオークランド・アスレチックス西地区)を3勝0敗で下し、3年ぶり33回目のリーグ優勝およびワールドシリーズ進出を果たした。

この年は、選手会が6月12日から7月31日にかけてストライキを実施したため、レギュラーシーズンがスト前・スト後の2シーズン制となり、東西両地区で前期・後期優勝球団による年間王者決定戦(地区シリーズ)が組まれた。年間成績ではアスレチックスが西地区1位だったのに対し、ヤンキースは東地区4位と例年であればポストシーズン出場を逃す順位だが[注釈 3]、前期を制していたため地区シリーズに進出し、そこからリーグ優勝決定戦出場権を得た。

両球団がリーグ優勝決定戦で対戦するのはこれが初めて。この年のレギュラーシーズンでは両球団は7試合対戦し、ヤンキースが4勝3敗と勝ち越していた[1]。今シリーズは、全3試合の総得点がヤンキースの20点に対しアスレチックスは4点にとどまり、アスレチックスがリードしたのは第2戦・4回表の半イニングのみと、一方的な展開に終始した[2]シリーズMVPには、全3試合で3打点ずつの計9打点を挙げ、打率.500・1本塁打・OPS 1.488という成績を残したヤンキースのグレイグ・ネトルズが選出された。しかしヤンキースは、ワールドシリーズではナショナルリーグ王者ロサンゼルス・ドジャースに2勝4敗で敗れ、3年ぶり23度目の優勝を逃した。

今シリーズの第3戦は、記録として残る最初の観客によるウェーブが行われたことで知られる。チアリーダーのクレイジー・ジョージ・ヘンダーソンによれば、試合が3回に入ったとき「誰も見たことがないことをやってやろう」と思い立って周囲の観客に呼びかけ、3度目の挑戦で球場を一周させることに成功したという[3]。ただ彼は、記録として残されてはいないものの、より小規模なウェーブを2年前からアイスホッケーNHLのコロラド・ロッキーズの試合で先導していた[4]

試合結果

1981年のアメリカンリーグ優勝決定戦は10月13日に開幕し、3日間で3試合が行われた。日程・結果は以下の通り。

日付 試合 ビジター球団(先攻) スコア ホーム球団(後攻) 開催球場
10月13日(火) 第1戦 オークランド・アスレチックス 1-3 ニューヨーク・ヤンキース ヤンキー・スタジアム
1981年のアメリカンリーグチャンピオンシップシリーズの位置(アメリカ合衆国内)
ヤンキー・スタジアム
ヤンキー・スタジアム
オークランド・アラメダ・ カウンティ・コロシアム
オークランド・アラメダ・
カウンティ・コロシアム
10月14日(水) 第2戦 オークランド・アスレチックス 3-13 ニューヨーク・ヤンキース
10月15日(木) 第3戦 ニューヨーク・ヤンキース 4-0 オークランド・アスレチックス アラメダ・カウンティ・コロシアム
優勝:ニューヨーク・ヤンキース(3勝0敗 / 3年ぶり33度目)

第1戦 10月13日

映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
初回裏、グレイグ・ネトルズの3点二塁打でヤンキースが先制(1分12秒)
9回表、リッチ・ゴセージがデーブ・マッケイを左飛に打ち取り試合終了、ヤンキースが先勝(32秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
オークランド・アスレチックス 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 6 1
ニューヨーク・ヤンキース 3 0 0 0 0 0 0 0 X 3 7 1
  1. トミー・ジョン(1勝)  :マイク・ノリス(1敗)  Sリッチ・ゴセージ(1S)  
  2. 審判
    [球審]ニック・ブレミガン
    [塁審]一塁: ラス・ゲーツ、二塁: ジェリー・ニューデッカー、三塁: マーティー・スプリングステッド
    [外審]左翼: ダーウッド・メリル、右翼: ビック・ボルタジオ
  3. 試合開始時刻: 東部夏時間UTC-4)午後8時27分 試合時間: 2時間52分 観客: 5万5740人 気温: 53°F(11.7°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
オークランド・アスレチックス ニューヨーク・ヤンキース
打順 守備 選手 打席
オークランド・アスレチックス先発ラインナップの守備位置
M・ノリス
M・ノリス
J・ニューマン
J・ニューマン
K・ムーア
K・ムーア
D・マッケイ
D・マッケイ
M・クラッツ
M・クラッツ
R・ピーチャロ
R・ピーチャロ
C・ジョンソン
C・ジョンソン
打順 守備 選手 打席
ニューヨーク・ヤンキース先発ラインナップの守備位置
R・セローン
R・セローン
L・ミルボーン
L・ミルボーン
D・ウィン フィールド
D・ウィン
フィールド
J・マンフリー
J・マンフリー
1 R・ヘンダーソン 1 J・マンフリー
2 D・マーフィー 2 L・ミルボーン
3 DH C・ジョンソン 3 D・ウィンフィールド
4 T・アーマス 4 R・ジャクソン
5 M・クラッツ 5 DH O・ギャンブル
6 K・ムーア 6 G・ネトルズ
7 J・ニューマン 7 B・ワトソン
8 D・マッケイ 8 R・セローン
9 R・ピーチャロ 9 W・ランドルフ
先発投手 投球 先発投手 投球
M・ノリス T・ジョン

ヤンキースは初回裏、2番ラリー・ミルボーンの右前打と2四球で二死満塁の好機を作り、6番グレイグ・ネトルズが左中間へ走者一掃の適時二塁打を放って先制した。アスレチックスはこのとき、左翼手リッキー・ヘンダーソンに左翼線寄りを守るよう指示を出しており、それが裏目に出た[5]。アスレチックスの先発投手マイク・ノリスは、2回以降は立ち直って相手打線に追加点を許さず、味方打線の反撃を待つ。5回表、アスレチックスは一死二・三塁とし、2番ドウェイン・マーフィーの二ゴロで三塁走者ロブ・ピーチャロが生還して1点を返した。しかしヤンキースの先発投手トミー・ジョンは、次打者クリフ・ジョンソンを二ゴロに打ち取ってアスレチックスの反撃を断った。

ジョンは、アスレチックス打線に6イニングで2併殺打を含む10本の内野ゴロを打たせたものの[6]、6回表の途中で右足首を痛めた。ジョン自身は続投する気でおり、イニング終了後にはクラブハウスへ下がって患部にテーピングを施したが、ダグアウトへ戻ったジョンに監督のボブ・レモンは「何かあったらオフの間ずっと頭痛の種になる」と降板を告げた[5]。7回表、ヤンキースは2番手投手にロン・デービスを起用し、相手打線を三者凡退に封じる。しかし8回表、デービスは一死一塁から3番ジョンソンを四球で歩かせ、リッチ・ゴセージにマウンドを譲った。この打席でジョンソンは、バットが欠けたとしてタイムを要求し、交換に時間をかけた。このあとデービスは制球を乱し、3球連続ボールで四球を与えた。これについてアスレチックス関係者は、デービスの投球テンポを崩させて降板に追い込み、翌日の第2戦に向けてゴセージを温存させない狙いがあったと明かす[6]。ゴセージはこの場面を無失点で切り抜けると、9回表も三者凡退で終わらせて試合を締めた。

第2戦 10月14日

映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
2回表、アスレチックスのトニー・アーマスが放った本塁打性の打球を、左翼手デーブ・ウィンフィールドがフェンス上に手を伸ばして捕球(54秒)
4回裏、ルー・ピネラの3点本塁打でヤンキースが5点差に突き放す(1分7秒)
9回表、ジョージ・フレイジャーがドウェイン・マーフィーを一ゴロ併殺に打ち取り試合終了、ヤンキースが連勝(35秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
オークランド・アスレチックス 0 0 1 2 0 0 0 0 0 3 11 1
ニューヨーク・ヤンキース 1 0 0 7 0 1 4 0 X 13 19 0
  1. :ジョージ・フレイジャー(1勝)  :スティーブ・マキャーティー(1敗)  
  2. 本塁打
    NYY:ルー・ピネラ1号3ラン、グレイグ・ネトルズ1号3ラン
  3. 審判
    [球審]ラス・ゲーツ
    [塁審]一塁: ジェリー・ニューデッカー、二塁: マーティー・スプリングステッド、三塁: ダーウッド・メリル
    [外審]左翼: ビック・ボルタジオ、右翼: ニック・ブレミガン
  4. 試合開始時刻: 東部夏時間UTC-4)午後2時10分 試合時間: 3時間8分 観客: 4万8497人 気温: 61°F(16.1°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
オークランド・アスレチックス ニューヨーク・ヤンキース
打順 守備 選手 打席
オークランド・アスレチックス先発ラインナップの守備位置
S・マキャーティー
S・マキャーティー
M・ヒース
M・ヒース
K・ムーア
K・ムーア
D・マッケイ
D・マッケイ
M・クラッツ
M・クラッツ
F・スタンリー
F・スタンリー
R・ボセッティ
R・ボセッティ
打順 守備 選手 打席
ニューヨーク・ヤンキース先発ラインナップの守備位置
R・メイ
R・メイ
R・セローン
R・セローン
L・ミルボーン
L・ミルボーン
D・ウィン フィールド
D・ウィン
フィールド
J・マンフリー
J・マンフリー
1 R・ヘンダーソン 1 J・マンフリー
2 D・マーフィー 2 L・ミルボーン
3 K・ムーア 3 D・ウィンフィールド
4 T・アーマス 4 R・ジャクソン
5 M・クラッツ 5 DH O・ギャンブル
6 M・ヒース 6 G・ネトルズ
7 D・マッケイ 7 B・ワトソン
8 DH R・ボセッティ 8 R・セローン
9 F・スタンリー 9 W・ランドルフ
先発投手 投球 先発投手 投球
S・マキャーティー R・メイ

ヤンキースは前日に続きこの日も、初回裏に先制点を挙げる。一死一・三塁とし、4番レジー・ジャクソンの二ゴロ間に三塁走者ジェリー・マンフリーが先制のホームを踏んだ。その直後の2回表、アスレチックスの先頭打者トニー・アーマスが左翼方向へ飛球を打ち上げた。打球は左翼スタンド最前列への同点本塁打になりそうだったが、左翼手デーブ・ウィンフィールドが左翼フェンスに足をかけて手を伸ばし、もぎ取ってアウトにした。3回表が始まるとき、ジャクソンは右翼守備へ向かう際に左ふくらはぎに異常を感じ[7]ルー・ピネラに交代した。アスレチックスはその回、一死二塁から1番リッキー・ヘンダーソンの適時三塁打で同点に追いつく。さらに4回表、一死一・二塁から7番デーブ・マッケイの適時打で1点を勝ち越し、相手先発投手ルディ・メイを降板に追い込むと、2番手投手ジョージ・フレイジャーに対し一死満塁として、9番フレッド・スタンリーの適時打でもう1点を加えた。ただフレイジャーは、次打者R・ヘンダーソンは「狙い通り」に投ゴロ併殺に仕留めた[8]

その直後の4回裏、ヤンキースは先頭打者グレイグ・ネトルズが右前打で出塁したのを足がかりに反撃に転じる。一死一・二塁から9番ウィリー・ランドルフの適時打で1点を返し、次打者マンフリーはストレートの四球を選んで満塁とする。アスレチックスも先発投手スティーブ・マキャーティーを諦め、デーブ・ベアードをマウンドへ送った。ここでヤンキース打線は、2番ラリー・ミルボーンの適時打でまず同点とすると、3番ウィンフィールドの二塁打で2点を勝ち越し、さらに4番ピネラの3点本塁打で点差を5点に広げた。この本塁打は左翼スタンド最前列に飛び込んでおり、もし左翼手が身長5フィート10インチ(約177.8cm)のR・ヘンダーソンではなく6フィート6インチ(約198.1cm)のウィンフィールドであれば、2回表のアーマスの打球と同じ結果になっていたかもしれなかった[7]。このあと打者一巡となり、6番ネトルズはこの回の2打席目でも右前打を放った。これはさらなる追加点にはつながらなかったものの、ネトルズはリーグ優勝決定戦史上初となる1イニング2安打を達成した[8]

ヤンキースはその後もアスレチックス救援投手陣を打ち崩し、6回裏に7番ボブ・ワトソンの適時打で1点、7回裏には5番オスカー・ギャンブル犠牲フライと次打者ネトルズの3点本塁打で4点を追加して、13-3とした。フレイジャーは5回以降も続投し、アスレチックス打線に4点目を許さない。9回表には観客から、アスレチックス監督のビリー・マーチンへ向けて「グッバイ・ビリー」とチャントが発生した[9]。その状況下でフレイジャーは、一死一塁から2番ドウェイン・マーフィーを一ゴロ併殺に打ち取って試合を締めた。これによりヤンキースが連勝でシリーズ突破に王手をかけた。

第3戦 10月15日

映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
9回表二死満塁、グレイグ・ネトルズの走者一掃二塁打でヤンキースが4点差に突き放す(44秒)
その裏、リッチ・ゴセージがウェイン・グロスを二飛に打ち取り試合終了、ヤンキースのリーグ優勝が決定(28秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
ニューヨーク・ヤンキース 0 0 0 0 0 1 0 0 3 4 10 0
オークランド・アスレチックス 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 2
  1. デイブ・リゲッティ(1勝)  マット・キーオ(1敗)  
  2. 本塁打
    NYY:ウィリー・ランドルフ1号ソロ
  3. 審判
    [球審]ジェリー・ニューデッカー
    [塁審]一塁: マーティー・スプリングステッド、二塁: ダーウッド・メリル、三塁: ビック・ボルタジオ
    [外審]左翼: ニック・ブレミガン、右翼: ラス・ゲーツ
  4. 試合開始時刻: 太平洋夏時間UTC-7)午後5時28分 試合時間: 3時間19分 観客: 4万7302人 気温: 63°F(17.2°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
ニューヨーク・ヤンキース オークランド・アスレチックス
打順 守備 選手 打席
ニューヨーク・ヤンキース先発ラインナップの守備位置
R・セローン
R・セローン
L・ミルボーン
L・ミルボーン
D・ウィン フィールド
D・ウィン
フィールド
J・マンフリー
J・マンフリー
B・マーサー
B・マーサー
打順 守備 選手 打席
オークランド・アスレチックス先発ラインナップの守備位置
J・ニューマン
J・ニューマン
K・ムーア
K・ムーア
D・マッケイ
D・マッケイ
M・クラッツ
M・クラッツ
R・ピーチャロ
R・ピーチャロ
C・ジョンソン
C・ジョンソン
1 J・マンフリー 1 R・ヘンダーソン
2 L・ミルボーン 2 D・マーフィー
3 D・ウィンフィールド 3 DH C・ジョンソン
4 DH B・マーサー 4 T・アーマス
5 O・ギャンブル 5 M・クラッツ
6 G・ネトルズ 6 K・ムーア
7 B・ワトソン 7 D・マッケイ
8 R・セローン 8 J・ニューマン
9 W・ランドルフ 9 R・ピーチャロ
先発投手 投球 先発投手 投球
D・リゲッティ M・キーオ

この試合は、アスレチックスの先発投手マット・キーオがヤンキースの先頭打者ジェリー・マンフリーに対し頭部死球すれすれの球を投じ、マンフリーが避けながら打席に倒れ込んで始まった。この初球について2番ラリー・ミルボーンは「あれは俺たちへのメッセージだろうな」と、キーオが故意に投げたと判断した[10]。試合後、アスレチックス監督のビリー・マーチンは「頭を狙わせたのか」と訊かれ「ノーコメント」と繰り返した[11]。ヤンキースはマンフリーの見逃し三振のあと、ミルボーンの安打と2四球で二死満塁としたが、6番グレイグ・ネトルズが右飛に打ち取られた。一方のアスレチックスも、ヤンキースの先発投手デイブ・リゲッティに対し一死一・二塁としたが、4番トニー・アーマスは遊ゴロ併殺で先制の好機を逸した。

キーオは2回表に二死一・三塁、3回表には一死三塁、4回表にも二死一・二塁と、初回から4イニング連続で得点圏に走者を背負いながら無失点で切り抜けた。リゲッティも、2回裏一死一・二塁や3回裏無死二塁でアスレチックスに先制点を許さなかった。0-0で試合が進むなか、アスレチックスは主力選手を故障で失う。初回裏には2番ドウェイン・マーフィー胸郭を、5回裏には1番リッキー・ヘンダーソンが左手首を、それぞれ打席で痛めて途中交代した[12]。6回表、ヤンキースは二死無走者で9番ウィリー・ランドルフがソロ本塁打を放ち、均衡を破った。ランドルフの本塁打は4月28日以来だった[10]。リゲッティはその裏を三者凡退に封じると「俺の仕事は6イニングを投げること。そのあとは(ロン)デービス(リッチ)ゴセージがいるからな」と話す通り、7回裏からはデービスにマウンドを譲った[12]。これに対してアスレチックスはキーオを続投させ、試合は1-0のまま8回を終えた。

9回表、ヤンキースの先頭打者マンフリーが四球で出塁し、2番ミルボーンは犠牲バントを試みて初球を転がした。この打球処理で二塁手デーブ・マッケイが失策を犯し、無死一・二塁となった。アスレチックスは、キーオが3番デーブ・ウィンフィールドを三振させたところで継投に入り、2番手にトム・アンダーウッドを投入した。しかしヤンキース打線はアンダーウッドを打ち崩す。4番ボビー・マーサーの代打ルー・ピネラは左前打で、左翼手マイク・ヒースの送球により二塁走者マンフリーは本塁憤死に。5番オスカー・ギャンブルの代打バリー・フットは右前打で、今度は二塁走者ミルボーンが三塁で止まり満塁となる。そして6番ネトルズが中堅手リック・ボセッティの頭上を越える二塁打で走者を一掃し、ヤンキースは3連打でリードを4点に広げた。その裏は抑え投手ゴセージが登板して無失点で締め試合終了、ヤンキースが3年ぶりのリーグ優勝を決めた。

ヤンキースは試合後、球団オーナーのジョージ・スタインブレナーがクラブハウスでのシャンパンファイトを「ワールドシリーズに勝ったわけではない」として禁じたため、カリフォルニア州オークランド市内のレストランで祝勝会を実施した[6]。この会で、ネトルズとレジー・ジャクソンが殴り合いの喧嘩をする事件が起きた。ジャクソンが会に友人を連れてきて、その友人がネトルズ夫妻のテーブルに割り込み妻に席をどくよう要求してきたため、ネトルズが激昂し喧嘩に発展したという[13]。ワールドシリーズ敗退後、ネトルズがヤンキースの主将に任命される一方、ジャクソンはヤンキースとの5年契約を満了してFAとなり、カリフォルニア・エンゼルスへ移籍する。

評価

『ハードボール・タイムズ』のクリス・ジャフは2012年10月、歴代のポストシーズン各シリーズのうち、優勝球団が初戦から全勝する "スウィープ" のシリーズを対象に「敗退球団がリードしたイニング数が10以上なら0ポイント、5以上10未満なら2ポイント、……全くなければ25ポイント」「1試合平均の得点差が2未満なら0ポイント、2以上2.5未満なら1ポイント、……3以上3.5未満なら5ポイント、以降は0.5点ごとに2ポイントずつ加算」などの条件を設定し、つまらなさを算出した。その結果、今シリーズは58ポイントを獲得し、同年の両リーグ優勝決定戦まで計67度のスウィープ中2位タイとなった[注釈 4][2]

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 殿堂入りは指導者としてではなく、投手としての功績が評価されてのもの。
  2. ^ 殿堂入りは指導者としてではなく、捕手としての功績が評価されてのもの。
  3. ^ 東地区の年間勝率1位は、ミルウォーキー・ブルワーズ。ブルワーズは後期優勝を果たし地区シリーズに進出したが、ヤンキースに2勝3敗で敗れた。
  4. ^ 1位は1989年のワールドシリーズで67ポイント。58ポイントで今シリーズと並んだのは、1970年のアメリカンリーグ優勝決定戦である。

出典

  1. ^ "1981 New York Yankees Schedule," Baseball-Reference.com. 2021年2月7日閲覧。
  2. ^ a b Chris Jaffe, "The 10 worst postseason sweeps ever," The Hardball Times, October 22, 2012. 2021年2月7日閲覧。
  3. ^ Finlo Rohrer, "Who invented the Mexican Wave?," BBC News, June 16, 2010. 2021年2月7日閲覧。
  4. ^ Joshua Kloke, "Colorado was the birthplace of ‘The Wave’," The Hockey News on Sports Illustrated, March 28, 2015. 2021年2月7日閲覧。
  5. ^ a b Murray Chass, "YANKS TOP A'S, 3-1, IN FIRST GAME OF PENNANT PLAYOFF," The New York Times, October 14, 1981. 2021年2月7日閲覧。
  6. ^ a b c Jim Kaplan, "ALL THE YANKEES WERE DANDIES," Sports Illustrated Vault, October 26, 1981. 2021年2月7日閲覧。
  7. ^ a b Ken Denlinger, "Of Hits and Heights: Winfield's Winsome Way," The Washington Post, October 15, 1981. 2021年2月7日閲覧。
  8. ^ a b Murray Chass, "YANKS ROUT A'S, 13-3, ON 7-RUN 4TH FOR 2-GAME LEAD," The New York Times, October 15, 1981. 2021年2月7日閲覧。
  9. ^ Mike Tully, UPI Sports Writer, "The New York Yankees found the answer to Billy...," UPI Archives, October 14, 1981. 2021年2月7日閲覧。
  10. ^ a b Murray Chass, Special to the New York Times, "YANKEES BEAT A'S, 4-0, AND GAIN WORLD SERIES," The New York Times, October 16, 1981. 2021年2月7日閲覧。
  11. ^ Dave Anderson, "SPORTS OF THE TIMES; FOR THE YANKEES, IT'S BOBBYBALL NOW," The New York Times, October 16, 1981. 2021年2月7日閲覧。
  12. ^ a b Gary Pomerantz, "Yankees Sweep A's," The Washington Post, October 16, 1981. 2021年2月7日閲覧。
  13. ^ Gary Pomerantz, "The Yankees Are At It Again," The Washington Post, October 17, 1981. 2021年2月7日閲覧。

外部リンク

  • Baseball-Reference.com(英語)
  • 1981 American League Championship Series - IMDb(英語)
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  • 2039
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メジャーリーグベースボールのポストシーズン
トロフィーと表彰
ニューヨーク・ヤンキース
球団
歴代本拠地
文化
永久欠番
ワールドシリーズ優勝(27回)
ワールドシリーズ敗退(13回)
リーグ優勝(40回)
できごと
傘下マイナーチーム
オークランド・アスレチックス
球団
歴代本拠地
文化
永久欠番
フィラデルフィア野球殿堂
アスレチックス球団殿堂
ワールドシリーズ優勝(09回)
ワールドシリーズ敗退(05回)
リーグ優勝(15回)
傘下マイナーチーム